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テラコブログ

たまに戦車のプラモデルを作ります

須川邦彦「無人島に生きる十六人」

椎名誠さんの著作の中で触れられており、読んでみたいなあと思っていたのですが、検索したら、青空文庫にありました。Kindleにもあった。すごいぞ、青空文庫!すごいぞ、Kindle

須川邦彦 無人島に生きる十六人

無人島に生きる十六人

無人島に生きる十六人

あらすじ

明治31年、帆船・龍睡丸は大嵐で難破、パールアンドハーミーズ環礁に漂着します。中川船長以下16人は飲料水もなく、物資も乏しいこの島で、それでも明るくいつか日本に帰れると信じて疑わずに行動し、サバイバルしていく・・・。

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

表紙をごらんのとおり、子供向け? 著者須川さんが「中川先生」から過去の話をきく、という導入ですし、どうやら少年少女向けに書かれているようです。しかし軽くはない、それどころかじゅうぶんに奥深くなにより面白い、読後は心にどこか奥の部分がスッとして、色々と考えさせられる物語でした。読んでよかったです。

淡々とした積み重ねがいい

無人島での生活は、実に地味なことの積み重ねです。雨水をためる工夫、主食となるウミガメ(ウミガメのことを正覚坊っていうんですな、知らんかった)魚の漁、島にはない薪となる流木あつめ・・・。胸おどる無人島での冒険はありません。この地味な積み重ね、命を明日につないでいくための工夫ひとつひとつが冒険なのだなあと読み進めました。

無人島での過酷な共同生活を送る上で、中川船長以下16人が持った規律が以下の4つです。

一つ、島で手にはいるもので、くらして行く。
二つ、できない相談をいわないこと。
三つ、規律正しい生活をすること。
四つ、愉快な生活を心がけること。

うーむ、このうえなく単純だけど、超重要だな〜。

船員の名前がいい

16人のなかには小笠原諸島捕鯨にきて、そのまま帰化した外国人が幾人かいます。その名前がなんかものすごく単純ですごい。なんとなく「明治感」がある。

最長老、経験豊富な小笠原は、そのまま島の名前からとった名前。シンプル〜。範多は捕鯨船の銛打ち=ハンターだから。シンプル〜。しかも銛打ち銃使うから、したの名前は銃太郎。範多銃太郎。超シンプル〜。

ちなみに小笠原船員は要所要所で重要な、長老ならではのポジションでイイアクションを起こしてみんなを鼓舞したりして、映画化するならこれ絶対モーガンフリーマンだな!といういいキャラです。

心の折れなさがいい

中川船長や小笠原船員ら経験豊富なベテランが最も危惧しているのは、日々の生活で、みんなの心が荒廃すること。最初は元気でも、ながく過酷な生活が続くと心細くなり気力が萎えます。

そのあたりのケアは、勉強会を開いたり、作った小屋をリニューアルしたり、ウミガメ牧場の設置、いざという時に備えアザラシを手なづけたり、と日々忙しく立ち働くことで解消しているように思えます。

この先何ヶ月何年でも救助を待てるように、と、貴重な米に手をつけなかったり、帆布を大事にとっておいたりするのも、心の荒廃対策なのだと思いました。水食料も大事ですが、決してそれだけでは生き延びられないのだなあと思いました。

カラッとした雰囲気がいい

少年少女向け?ということもあってか、雰囲気は全体的にカラッとえがかれており、またそれほど長くないのでスッと読め、読後感がよいです。結末から来るものはもちろんですが、なんといっても各員の持つスガスガしさ、明るさ、朗らかさが、横溢しているからでしょう。

またその奥底には、明治の日本の気分も大いに関係ありそうな気がします。

読んでよかったです。